無頼の掟

ジェイムス・カルロス・ブレイク「無頼の掟」読了。

翻訳ものは、久しぶりに読んだのですが、最高に面白いクライム・エンターテインメントでした。

アメリカ、１９２０年代末、禁酒法時代。

シカゴでは、マフィアの首領 アル・カポネとＦＢＩ捜査官 エリオット・ネスとの対決の時が迫り、また、油田開発の景気に沸く西部の荒野では、伝説のならず者達が暴れ回っていた。

ジョン・デリンジャー、ベビーフェース・ネルソン、マ・バーカーと息子達、そしてボニー・パーカー＆クライド・バロウ。

大恐慌直前のアメリカは、まさに悪の華・百花繚乱 狂い咲きといったところです。

まるで中国の「水滸伝」のような時代ですね。

物語の主人公、ソニーこと「俺」は、生まれついてのアウトローである双子の叔父の仲間になり、ギャング渡世を始める。

西部劇の時代は終わりを告げ、近代化の時代を迎えたかに思えたアメリカですが、油田開発の好景気に沸く西部では、銀行ギャングを生業とするならず者達が、未だマカロニウェスタンさながらのバイオレンスな生き様を爆発させていたのです。

冒頭、銀行強盗決行のさなか、主人公はいきなりドジを踏んで留置場に入れられてしまう。

そこでのケチな喧嘩で、有名な悪徳警官の息子を殺してしまい、強盗とは別件で刑務所に送られてしまう。

そこから、脱獄のプロセスと、主人公の生い立ち、二人の叔父についてギャングになるまでが、カットバック方式で織り交ぜながら語られるのですが、これが見事。

軽妙な語り口で紡がれる物語は、全くの悪党を描いていながら、ユーモラスで魅力的な人物像を作り上げています。

そして脱獄した主人公を追って、徐々に迫る悪徳警官。

大カタストロフともいえるラストシーンで遂に相まみえる二人。

果たして生き残るのはどちらかなのか？


歴史の短いアメリカですが、現代と西部劇の時代の中間に、こんな時代があったとは。

改めて、メチャクチャな国だなーと思いました。


ちなみにこの本は、以前NHK-BSの「週刊ブックレビュー」で児玉清さんが激賞されていたのをみて読んでみました。

TBSラジオ・ストリームのブックレビューとBSのこの番組は、ブックガイドとして、すごく頼もしいですね。