アメリカン・パイ

最近読んだ本の感想。

町山智浩・著
「アメリカ横断ＴＶガイド」
「底抜け合衆国」
「ＵＳＡカニバケツ」

私は、元・宝島の名物男こと町山智浩さんの大ファンでして、しかしながら著書のほうは全然読んでなかったので、まとめ読み。

町山さんの宝島編集時代の代表作といえば、「別冊宝島・おたくの本」ですが、私、コレ当時買って読んでました。
編集者が町山さんだと知ったのは、割と最近なんですけどね。

で、今回読んだ３冊なんですが、町山さんがキネマ旬報編集部にパイ投げテロを敢行して日本にいられなくなった後、アメリカに移住した１９９６年から２００４年までの雑誌コラムを集めたものだそうです。

主にアメリカの特異なテレビ番組の紹介やタブロイド誌の時事ネタを絡めたコラムなんですが、２０００年春までの４年間が実にお気楽な近況報告なのに対し、２００１年の同時多発テロを皮切りに一気に雰囲気が変わっていきます。

クリントン時代の好景気から、ブッシュ大統領の共和党政権に変わった途端に、戦争、貧困、格差、差別、右傾化、キリスト教原理主義などの、アメリカの暗部が浮き彫りになります。
はっきり言って、笑えない！

この本で書かれている時期から後の状況は、コラムの花道などでチェックするとより立体的になるんですが、時系列で追うことにより、私の中でのアメリカという国の印象が一変しました。

誰もが世界最先端にして最強の国だと思っているアメリカが、実のところ、科学を否定する原理主義によって国論を左右され、大手右翼メディアによって国民は低能化し、国内にまともな産業は一切無く、金融と戦争によってのみ、かろうじて国際社会で存在し得ているという現実。
（しかもその金融と戦争も、ブッシュの失策のおかげで現在では全くダメになってしまった！）

アメリカの現状は、決して対岸の火事ではない。

ちなみに「ＴＶガイド」と「底抜け」ではその両方で、締め括りの部分でマイケル・ムーアをフューチャーリングしています。
丁度タイミング良く「ボウリング・フォー・コロンバイン」と「華氏９１１」の公開時期に重なったということもあるでしょうが、町山さんがムーアにシンパシーを感じていることは明かですね。
多分、ムーアの、ミギ・ヒダリの思想とは関係のない、ある意味で幼稚とも言える正義感に共感するところが大きかったのでしょう。

私は正直、マイケル・ムーアの道化じみたドキュメンタリーの手法に興味を感じていなかったのですが、思い直しました。
改めて、彼の作品を見てみようと思います。

結局、華氏９１１でのムーアのブッシュ下ろしキャンペーンも虚しく、今年２００８年まで「希代のアンポンタン・プレジデント」ブッシュの時代は続いてしまいました。
結果、アメリカは完全に虫の息ですね。

それでも未だ世界通貨として流通するドルと、世界中から集まってくる最高の頭脳たちのおかげで、アメリカは持ち直すかも知れません。

翻ってみて、日本はどうなんだ？
日本にだって、宗教勢力の政治介入や貧困・差別を容認するような風潮、右傾化しつつある国論、低能化する国民など、アメリカそっくりの状況があります。

さすがに、そろそろちゃんと考えないといけない時期に来ていると思いますね。