やわらかく気の触れたこの世界

最近読んだ本の感想。

ジョナサン・キャロル・著/浅羽莢子・訳
「パニックの手」

毎度お馴染みの「ストリーム・ブックレビュー」でトヨザキ社長が薦められていた、ジョナサン・キャロルを読んでみました。
とりあえず、いつものブックオフの１００円コーナーで２冊ゲットしたした内の一冊。

基本的にこの人は長編を得意とするの作家のようなんですが、この「パニックの手」は短編集でした。

紹介によると、キャロルという作家の作品は、ダーク・ファンタジーと称されるそうです。
ファンタジーというと、どうしても指輪物語とかエルリック・サーガなんかを思い浮かべてしまいますが、単に幻想小説という意味合いで捉えた方が当たっていると思います。

私としては、スティーブン・キングの一連の作品に近い印象ですが、キングのようにあからさまなホラーでは無く、奇妙な読後感を残す話ばかりでした。
また、それぞれが短編だったこともあって、トワイラトゾーンやウルトラＱを連想してしまいました。

基本的には、アメリカの中産階級のそれなりに幸せな人々の穏やかな生活を丹念に描きつつ、そこにぼんやりと忍び寄る「あり得ない不気味な存在」との対比を見せるといった感じでしょうか。
しかし中には何も起こらない話もあって、それが他の作品とのコントラストを為していて、本全体としての奇妙な印象を際だたせています。

面白かった話としては、「おやおや町」「友の最良の人間」「ジェーン・フォンダの部屋」「僕のズーンデル」の４つが個人的に白眉。
「おやおや町」は、感じの良いハウスキーパーのオバサンを雇ったら、彼女はこの世界の神を構成する３６人の超人の一人だった、そして…という話、まぁワケ分かんないですわな。

翻訳の上手さに因るところもあるのでしょうが、まずアメリカ中産階級の人々の描き方の巧みさに感心してしまいます。
そしてまた、キャロルの「仕掛け」はそういう人々にこそ似合うんですよ。
これが登場人物がホワイト・トラッシュとかだと、スプラッタ・ホラーになっちゃうでしょうね。

品の良さと不気味な余韻の対比こそが、この作家の真骨頂なんだと思いました。

ちなみに、一緒に買った「月の骨」をいま読んでいます。

また、トヨザキ社長お奨めの「炎の眠り」を探したら、絶版になっていて、アマゾンで法外な値段で売られていて頭に来ました。
その中では格安の１０００円で売られていたのを泣く泣く買ったんですが、結構なボロ本で、かつ堂々とブックオフの１００円値札を付けたまま送ってきやがった。

町山さんの「底抜け合衆国」も現在絶版中で、これまた法外な値段で売られているようで、私としては安く買えて良かったと胸をなで下ろしました、がしかし！
そんなことより、ハッキリ言ってこういう業者は死ねと言いたい、１００年以内に。