さまよう薔薇のように

最近読んだ本の感想。

矢作俊彦「さまよう薔薇のように」

もし無人島へ一冊だけ持って行く本をチョイスするとき、漫画なら迷わず「気分はもう戦争」を持って行く。
私の中で、古今東西最高傑作だと確信する漫画です。

その漫画の原作担当（作画担当は大友克洋）のハーボイルド作家・矢作俊彦の代表作の一つを読みました。
文芸評論家の福田和也さんが「掛け値なしの傑作」と評した作品です。

舞台は１９８０年代前半、横浜。
元検察事務官で一人称の男「私」が主人公。
トレードマークは口ひげ。

この時点で、私の中で主人公の配役は藤竜也に決まり。
ヨコハマ・ホンキー・トンク・ブルース。

また、相棒役で若い警官が登場するんですが、彼のちょっとセコくて子分肌の感じは、真木蔵人がピッタリだと思います。
まぁ、年齢的にはマッチしませんが。

物語は、主人公を同一にした短編が３つ。
それぞれに軽妙さな語り口とほろ苦い結末の話で、大人の雰囲気。

先に読んだ福井晴敏の作品とは全く違う文体なので、最初とまどいましたが、たたみかける独特の比喩表現に慣れたら病み付きになります。

一人称で、やたらと洒落た比喩を語りまくる主人公ですが、それはあくまで見たものに対する表現や感想であって、自身の心情や考えは殆ど表に出さないところが、実にハードボイルドなのだなぁと思いました。

ところで、物語のタイトル「さまよう薔薇のように」。
今まで見聞きした中でも最高に格好いい表題だと思います。
私がいま思いつく格好いいタイトルとしては、他に「流れよわが涙、と警官は言った」「死の翼アルバトロス」「007は二度死ぬ」「荒鷲の要塞」なんかがありますが、それらの名作に匹敵する素晴らしさです。

しびれるナァ。